長沢の長者

みかしむかし、長沢に住んでいた長者には、たいそう美しい一人娘がおりました。

娘の美しさを聞きつけた乱暴者の地頭が、娘を嫁にもらいたいと長者に頼みました。しかし、長者は、「一人娘なので嫁にはやれません」と地頭の申し出を断りました。長者の返事に怒った地頭は、どうしても長者から娘を奪おうと長者に様々な無理難題を持ちかけました。

地頭の仕返しにほとほと困り果てた長者は、山を越えて山形県の最上へ引っ越すことを決めました。七月六日の晩、雇い人を全員道路に立たせ、長沢から最上まで手送りで家財道具を全部運んでしまったのです。長者が引っ越すと聞いた化女沼の貝やたにしも細い掘りをつたってどんどん最上へ移ってしまいました。

その時、娘が織りかけていた機と金色の鶏を化女沼に沈めてしまったので、七月七日の朝には沼の中から鶏の鳴く声がしました。

それからというもの、沼から鶏の鳴き声が聞こえると必ず悪いことが起きるといわれています。