照夜姫と化女沼伝説

むかし、沼のほとりに長者が住んでおり、長者には美しい娘がおりました。姫は朝な夕な、その美しい姿を沼辺に見せていました。すると、そのあまりの美しさにたくさんの蛇が水面に集まるようになりました。

ある秋の夕暮れのこと、美しい顔立ちの若者が通りかかり、許しをこうて長者の家に泊まることになりました。

やがて、若者は旅立つことになり、姫は大変別れを惜しみ嘆き悲しみました。若者が去ってからというもの、打ち沈む姫の姿に長者の家は、ひっそりとしていました。

ある日、物思いにふけって草原で横たえていた姫は、身体に異常を感じ、あわてて館に戻りました。しばらくして、姫は蛇を産み落としました。産み落とされた蛇は、館を抜けて、沼の中へ音もなく消えてしまいました。

それからというもの毎晩、沼の中から赤ん坊の声が聞こえるようになりました。姫は、その泣き声に誘われ、引きずり込まれるように自ら沼に身を投げてしまいました。その夜から鳴き声はぴたりと聞こえなくなりました。

以来、毎年五月の節句の日には、この沼から機を織る音が聞こえるそうです。